
今日は製造現場でもよく耳にする「測定値のバラつきって、測定器のせい?それとも人?」という悩みに、統計でバシッと答えを出す方法をご紹介します。
その名も ゲージR&R(Gage Repeatability and Reproducibility)!
◆ あるある事例からスタート!
たとえば、ある工場で以下のような測定をしたとします。
測定者:3人(山田さん、田中さん、佐藤さん)
製品サンプル数:10個
測定回数:各測定者が各サンプルを2回測定
これをエクセルで表にした場合、行数は 3測定者 × 10サンプル × 2回 = 60行になります。
◆ ゲージR&Rとは?
測定のバラつきの原因を次の3つに分けて分析します。
要因 | 意味 |
---|---|
Repeatability | 同じ人が同じものを測ってもバラつく(測定器の誤差) |
Reproducibility | 測定者が変わると結果も変わる(人による差) |
製品間の差 | 測定している製品自体の違い(本来の個体差) |
これらを統計的に「分散」という指標で数値化し、測定システムがどれだけ正確なのかを評価します。
◆ 実際に計算してみよう!
💡前提データ(サンプル)
サンプル | 測定者 | 1回目 | 2回目 |
---|---|---|---|
1 | 山田 | 100.2 | 100.3 |
1 | 田中 | 100.5 | 100.4 |
1 | 佐藤 | 100.6 | 100.7 |
2 | 山田 | 99.8 | 99.9 |
… | … | … | … |
合計60データ(3人 × 10サンプル × 2回)
◆ ステップ①:総分散(全体のばらつき)を求める
まず、全60個のデータから平均値(全体平均)を求めます。
たとえば、60個の測定値の合計が6000だったら
次に、総分散を求めます
総分散は各測定値と全体平均の差の2乗を合計して、データ数から1引いた数で割った数字です。
式は以下のようになります。

たとえば、測定値が以下の5つだった場合を例にして、
総分散を計算してみますね
測定値:99.1、100.3、100.0、99.5、101.0
🔹ステップ1:全体の平均を求めよう
まず、全部の数を足して、5で割ります。
99.1+100.3+100.0+99.5+101.0=500.999.1 + 100.3 + 100.0 + 99.5 + 101.0 = 500.9 平均=500.9÷5=100.18平均 = 500.9 ÷ 5 = 100.18
🔹ステップ2:「測定値 − 平均」を計算しよう
測定値 | 測定値 − 平均 (100.18) |
---|---|
99.1 | 99.1 − 100.18 = -1.08 |
100.3 | 100.3 − 100.18 = +0.12 |
100.0 | 100.0 − 100.18 = -0.18 |
99.5 | 99.5 − 100.18 = -0.68 |
101.0 | 101.0 − 100.18 = +0.82 |
🔹ステップ3:「差」を2乗しよう(マイナスが消える)
差 | 差²(2乗) |
---|---|
-1.08 | 1.1664 |
+0.12 | 0.0144 |
-0.18 | 0.0324 |
-0.68 | 0.4624 |
+0.82 | 0.6724 |
合計すると:
1.1664+0.0144+0.0324+0.4624+0.6724=2.3481.1664 + 0.0144 + 0.0324 + 0.4624 + 0.6724 = 2.348
🔹ステップ4:「データ数 − 1」で割る
今回はデータが5個なので、5−1 = 4 で割ります。
総分散=2.3484=0.587\text{総分散} = \frac{2.348}{4} = 0.587
✅答え:総分散は 約 0.587
±仮にその計算結果がσ²_total = 0.05
だったとしましょう。
◆ ステップ②:繰返し性(Repeatability)の分散を求める
次に、同じ測定者が、同じ製品を2回測ったときのばらつきを計算します。
たとえば、山田さんが製品1を2回測った結果:
100.2, 100.3 → 平均 = 100.25
差 = (100.2 – 100.25)² + (100.3 – 100.25)² = 0.0025
この操作を各測定者×各製品(つまり30セット)に対して行い、平均を取ります。
(÷2は、1つのセットに2回の測定があるため)
仮に計算して σ²_repeat = 0.01
だったとします。
◆ ステップ③:再現性(Reproducibility)の分散を求める
再現性は、測定者による違いの影響です。
各測定者ごとの平均値を出します
その測定者平均と、全体平均との差を計算し、それを二乗して合計
仮にこの結果が σ²_reproduce = 0.015
だったとします。
◆ ステップ④:部品間のばらつき
製品ごとに、全測定者・全回数の平均を出して、
それらのばらつき(分散)を求めます。
これが σ²_part = 0.024
だとしましょう。
◆ ステップ⑤:ゲージR&Rの合計と割合を求める!
全体の中で測定誤差が占める割合は:
◆ 判断基準と対策
ゲージR&Rの割合 | 評価 |
---|---|
≦10% | OK!信頼できる測定システムです |
10–30% | グレーゾーン。改善の余地あり |
>30% | 測定システムを見直すべき! |
今回の50%は 要注意レベル!
◆ まとめ
測定のバラつきは「繰返し性」「再現性」「製品の個体差」に分けて考える
分散を使って「測定システムの信頼性」を数値で評価できる
測定ミスや誤差がどこから来ているか、数式で見える化できるのがゲージR&R!
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