小さなセラコン(積層セラミックコンデンサ)も見た目は同じように見えますが、メーカが異なると内部構造は全く異なる場合が多いです。
今回の記事は
セラコンの内部構造を観察する方法を
紹介します。
セラコンメーカの技術力はセラコンの断面研磨サンプルを作製して、内部構造を観察を行うことで初めて確認できる可能性が高くなります。
新しいセラコンメーカの採用検討する場合は、是非、セラコンの内部構造を観察してメーカの技術力を確認するようにしましょう。
セラコンの非破壊観察(Ⅹ線)は期待しない方がよい
セラコンの内部構造を非破壊のX線で調べることができればよいのですが、セラコンのⅩ線観察は期待しないほうが良いです。
セラコンをX線で調べるのが難しい理由は2つあります。
理由①:誘電体(セラミック)のチタン酸バリウムはX線を透過し難い。
バリウムは胃のX線検査でもお馴染みの金属です。
バリウムはX線を透過し難い金属なので、胃のX線検査で用いられています。
セラコンのセラミック部(誘電体)は、このバリウムを含んだチタン酸バリウムが使われているのでX線を透過し難く、Ⅹ線観察では細部まで観察できません。
残念ながら、
セラコンはⅩ線観察には向いていない部品なのです。
ただし、セラコンをⅩ線観察するのは意味がないことはありません。
ざっくりと内部構造(アクティブエリアの位置など)を調べることは出来ますし、Ⅹ線CTであれば、大きなクラックのような内部欠陥を見つけることができる場合もあります。
理由②:セラコンの積層層は緻密かつ微細
セラコンは技術のメーカの努力のおかげもあり、どんどん小さく小型になっています。
セラコンが小さくなるということは、内部の積層層(電極と誘電体)も薄くなり、狭ピッチになっています。
薄く、狭ピッチになればなるほど、X線では詳細に観察することが難しくなります。
ぼくも何度かセラコンのX線観察を試んだことがあるけど、
詳細に内部構造を観察することは難しかったよ。
セラコンの内部構造を観察する方法は?
セラコンの内部構造はどうすれば観察することができるのかというと、
セラコン自体を削って、内部を露出させて観察する方法が最も確実で効果的です。
専門の調査会社に依頼してセラコンの内部構造の調査を依頼しても、
内部を露出させる方法。つまり、セラコンの研磨サンプルを作製して研磨面を観察します。
この研磨サンプルの作製ですが、とても技能や経験が必要と思われるかも知れませんが、特に特別な道具や技能は必要ありません。
家庭にある一般の道具でもセラコンの研磨サンプルを作製することが出来るのです。
研磨をする前に知っておこう
積層セラミックコンデンサの形状は正四角柱の場合が多く、どの面も全く同じ見た目なので、どの面を研磨したら「積層構造が確認できる面」が現れるのかは誰にも分かりませんので、複数個の積層セラミックコンデンサを研磨するれば「積層構造が確認できる面」が現れるはずです。
研磨サンプル作製に必要なもの
僕がいろいろと試行を繰り返して、見出した道具を紹介するね。
・消しゴム
・瞬間接着剤
・耐水性サンドペーパー
・コンパウンド
・フェルト
断面観察サンプルの作製方法
セラコンを消しゴムの上に載せる
セラコンを1個づつ研磨することも無理ではありませんが、とても小さく扱いにくいので、1円玉程度の大きさの台に載せて固定した状態で研磨した方が作業しやすいです。
台となるものは何でも良いのですが、ある程度の弾力があるゴムの方が研磨する際に扱いやすいのでお勧めです。
おススメは消しゴムです。
消しゴムの広く凹凸の無い平坦な面にセラコンを載せます。
消しゴムにセラコンを載せる際のポイントが2つあります。
セラコンは4個以上は載せる
セラコンは四角柱の形状をしているのですが、内部構造はミルクレープのように積層された状態です。
外形からは見分けがつかないのですが、研磨すると『積層構造が確認できる面』と『積層構造が確認できない面(積層面の平面側)』のどちらかの面が現れます。
積層構造が確認できる面が現れる確率は1/2ですから、4個以上を研磨すればほぼ間違いなく1個は積層構造を確認できる面が現れるはずです。
僕は10個は並べるようにしています。
セラコンは1か所に集めて置かずに分散させて置く
向きや方向はバラバラでも良いのですが、セラコンは分散させておいた方が良いです。
研磨する際、分散していた方が、水平に研磨しやすくなります。
瞬間接着剤を垂らしてセラコンを固定する。
研磨する際にセラコンがバラバラ落ちてしまわないように、接着剤で消しゴムとセラコンをしっかりと固定します。
研磨の際の応力や水洗いでもセラコンが剝がれないことが重要です。
接着剤を色々試した結果、瞬間接着剤が最適でした。
他の瞬間接着剤は試していないのでわかりませんが、
ぼくが使っている瞬間接着剤を紹介しておきます。
これなら確実に固定できますよ。
ポイントは瞬間接着剤をしっかりと固めること。
直ぐに固まる瞬間接着剤ですが、短くても4h程度は乾燥時間を置くようにしましょう。
サンドペーパーで研磨する。
瞬間接着剤がしっかり乾燥したら、研磨作業を開始します。
研磨作業の大まかな流れは以下の通りです。
2)少しづつ細かなサンドペーパーに変更して研磨する。そうすることで少しずつ傷が無くなって鏡面仕上げに近づきます。
3)微細な砥粒が入ったコンパウンドで研磨面を鏡面仕上げにしてセラコンの研磨サンプルは完成です。
内部構造が見えるまで粗いサンドペーパーでセラコンを研磨(削る)する。
まずは粗いサンドペーパーを使って一気に内部構造が見える面までセラコンを削ります。
荒削りに使用するサンドペーパーは#400番手くらいがおススメです。
また、使用するサンドペーパーは水に濡らして使用しますので耐水タイプのものを使いましょう。
#400番手くらいのサンドペーパーを凸凹していない平坦な面に置き、水道水を流し、サンドペーパーを濡らします。
サンドペーパーに水道水を流し掛けながら、セラコンを瞬間接着剤で固定した消しゴムを裏返して、消しゴムを動かしてセラコンを削ります。
あまり削り過ぎてセラコンが無くならないように、削ってはルーペで内部構造が見える面が見えないかを確認するようにしましょう。
おススメのルーペはこちら
少しづつ細かなサンドペーパーに変更して研磨することで傷を無くす。
内部構造が見えるまでセラコンが削れたら、サンドペーパの目を少しづつ細かくしながら研磨面の傷を消していきます。
ぼくが使っているサンドペーパーの番手は次の通りです。
#800 → #1200 → #2000 → #3000 → #5000
荒削りの時と同様に水道水を流しながら研磨します。
それぞれのサンドペーパーで研磨する時間は1分~2分程度で十分です。
研磨が終われば、その都度、研磨面を水洗いしてください。
水洗いの時は絶対に指などで研磨面に触れないようにしてください。
指で触れると研磨面に傷がついてしまいます。
#3000や#5000くらいのサンドペーパーで研磨が終われば、ほぼ鏡面に仕上がっていると思います。
ルーペや顕微鏡で観察して大きな傷などが無く内部構造が確認できれば研磨サンプルの完成です。
もっと高倍率の顕微鏡や電子顕微鏡で観察したい場合は、
コンパウンドを使ったバフ研磨がおススメです。
コンパウンド研磨も紹介するね
コンパウンドで研磨面を鏡面仕上げにすれば完璧
サンドペーパーで研磨するとそこそこ綺麗な研磨面に仕上がりますが、小傷が気になるようであれば、更に細かなサンドペーパで研磨するか、コンパウンド液をフェルトに垂らし、サンプルを2~3分程度研磨します。
研磨が終われば、セラコン表面に付着しているコンパウンドを水洗いします。
水洗いの時は絶対に指などで研磨面に触れないようにしてください。
指で触れると研磨面に傷がついてしまいます。
ピカピカの研磨面に仕上がるはずです。
ピカピカの研磨面をルーペや顕微鏡を使って詳細にポイントを確認することで、
そのセラコンは割れやすいか?
割れたときにショート故障に至るリスクが高いか?
などセラコンメーカの実力を確認することができます。
1点注意があります。
研磨面をそのままにしておくと、折角、鏡面仕上げにまで仕上げた研磨面に塵埃や小傷が付いてしまう危険性があります。
マスキングテープを研磨面に貼り付けることで、小傷や腐食を防ぎ、いつまでもピカピカの研磨面を維持することができます。
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