チップ抵抗の故障について やさしく解説

小さな部品 チップ抵抗

こんな小さな部品が1個でも故障してしまうと、機器全体が機能しなくなり、動かなくなってしまいます。

走る園児
走る園児

チップ抵抗で起こり易い故障モードを

解説するよ。

 

こんな方に向けて書きました。
・新人の技術者
・技術者として成長したい方
・技術知識に興味がある方
・チップ抵抗の故障で困っている方

トリミング溝に関わる故障

チップ抵抗の抵抗値を調整しているトリミング溝

チップ抵抗の抵抗値はトリミング溝の長さで調整しています

だから、トリミング溝に問題があると抵抗値が大きく変化してしまいます。

走る園児
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トリミング溝に関わる故障を解説するね。

経年で抵抗値が低下する 【トリミング溝の空孔】

通常、チップ抵抗のトリミング溝には、保護膜と呼ばれる樹脂が埋まっており、空孔はありません。

保護膜の樹脂はスクリーン印刷と呼ばれる方法でペースト状の樹脂をコート材の表面やトリミング溝の中に塗り広げます。

しかし、ペースト状の樹脂が硬かったり印刷速度が早すぎるなど塗布条件が不適切な場合、トリミング溝に樹脂が埋まらずに、トリミング溝に空孔が残ることがあります。

走る園児
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このようなトリミング溝に空孔があるチップ抵抗は

最初は正常なのですが、

長い時間使っていると抵抗値が急低下することがあります。

トリミング溝に空孔があると なぜ?抵抗値が低下するのか?

保護膜は樹脂であるため、水蒸気や水分を極わずかですが透過します。

機器の使用環境中の水蒸気や水分が少しづつチップ抵抗の保護膜の樹脂を透過し、トリミング溝の空孔で結露して水が溜まっていきます。

結露した水は純粋なので導電性は本来無いのですが、樹脂の添加物が水に溶け込むことで導電性が生じます。

導電性がある水がトリミング溝を満たすことで、電気的には短絡することになり、抵抗値が下がってしまいます。

トリミング溝に空孔があるチップ抵抗の特徴

トリミング溝に溜まった水は使用環境の湿度が低くなると少しづつ乾燥し減ることもあります。

このようにトリミング溝に空孔があるチップ抵抗は抵抗値が下がったり、元に戻ったりと抵抗値が不安定になるのが特徴です。

走る園児
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外観に異常が無くて、抵抗値が下がっている場合は

トリミング溝に空孔がある製造不良を疑った方が良いよ

経年で抵抗値が低下する 【トリミング溝に抵抗体の屑が残留】

抵抗体をレーザーで削ることでトリミング溝は作られます。

どうしてもトリミング溝には抵抗体の屑が残ってしまいます。

なので、トリミング溝を削った後は洗浄を行い、残留した抵抗体の屑を取り除きます。

しかし、洗浄が不十分だと抵抗体の屑が残ってしまい不具合の原因になります。

残留した抵抗体の屑が多量でトリミング溝を短絡している場合は、抵抗値の検査でNGとして検出されるので、市場で使われることはありませんが、

短絡しない程度に残留している場合は、抵抗値の検査で検出されずに良品として出荷され、市場で使われることになります。

トリミング溝に抵抗体の屑が残留しているとなぜ?抵抗値が低下するのか?

保護膜は樹脂なので、使用環境中の水蒸気や水分を極わずかですが透過します。

透過した随分は残留した抵抗体の屑の間を短絡することになり、

抵抗値が一気に低下します。

トリミング溝に抵抗体の屑が残留しているかを調べる方法

トリミング溝を蛍光X線やEDXなどで元素分析を行い、抵抗体の主成分であるRu(ルテニウム)が検出すれば、洗浄不良の可能性が濃厚です。

走る園児
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最後にトリミング溝以外の

よく起こる故障モードを1つ紹介するね

エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)

チップ抵抗の絶縁物(基板)の表面にイオン化した金属が少しづつ析出し短絡故障する不具合現象です。

エレクトロケミカルマイグレーションは金属の種類によって起こり易さが異なります。

チップ抵抗に使われている金属の中で最もエレクトロケミカルマイグレーションが起こりやすい金属は銀Agです。

内部電極があるチップ抵抗内部に塩分などのイオン性物質と水分が付着した状態でチップ抵抗に通電することで起こります。

エレクトロケミカルマイグレーション発生の原理

エレクトロケミカルマイグレーションが起こるためには次の3つの条件が揃う必要があります。

エレクトロケミカルマイグレーション発生のために必要な条件
1)金属(チップ抵抗の場合は銀(内部電極)もしくは錫(外部電極の半田)
2)水分(湿気)
3)電界

チップ抵抗を水分(湿度)が多い環境で使用すると、チップ抵抗の表面には極薄い水膜の結露水が付着します。

チップ抵抗が水で覆われることで外部電極の半田(主成分はSn(すず))金属がイオン化します。

Snがイオン化した状態でチップ抵抗に通電するとチップ抵抗両端の外部電極間に電位差(電界)が加わり、プラス側の外部電極周りに存在しているSnイオンがマイナス側の外部電極に移動し、再びマイナス側の外部電極でSn金属として生成されます。

そして、マイナス側の外部電極で生成されたSn金属が少しづつ成長しながらプラス側の外部電極に近づき、最終的にSn金属はプラス側の電極に到達し短絡経路になってしまいます。

半田マイグレーションができる箇所

事例として多いのが、チップ抵抗の側面や裏面です。

特に裏面はチップ抵抗がプリント基板に実装された状態では外観観察を行うことができないので発見が難しい箇所です。

しかし、マイグレーション発生の必須条件である水(結露)が最も生じやすい箇所が裏面であることから、最もマイグレーションの発生確率が高い箇所でもあります。

マイグレーションによる半田(Sn)のショートパスは非常に細く切れやすいことから、裏面を確認しようと高温の半田こてでチップ抵抗をプリント基板から外すようなことは避けなければなりません。

裏面を観察するためにチップ抵抗を取り外す方法は、熱ストレスは加えず機械的(ニッパーやカッターナイフ)で取り外すようにしましょう。

半田マイグレーションをチェックするのに適した道具

チップ抵抗に半田マイグレーションはチップ抵抗の表面、側面、裏面を顕微鏡などで拡大し注意深く観察する必要があります。

昔は顕微鏡はとても高額でしたが、

今は安くて質の高い顕微鏡が多く販売されています。

園児も安価な顕微鏡を愛用しています。

走る園児
走る園児

とても安価で使いやすく、くっきりと観察することができるお勧めの顕微鏡なので、参考までに紹介しますね。

PCに接続して使用するタイプで写真や動画もばっちり撮影することができて、とても重宝しています。

↓園児が愛用している個人用の顕微鏡↓

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