プラスチックの特性徹底解説 透湿性・吸湿性・吸水性

プラスチックの物性表には、「吸湿性」「吸水性」「透湿性」といった水分に関する物性が記されていますが、

それぞれがどのような物性なのか?

正確に理解している人は少ないと思います。

筆者が勤務しているメーカでもこれらを正確に理解している技術者は少ない気がします。

本記事では、プロの技術者でも間違えやすい、これらの物性について詳しく解説します。

技術者の方はもちろんのこと、多くの方に知っておいて頂きたい基本的な知識です。

ぜひ、最後まで読んでください。

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走る園児

透湿性、吸湿性、吸水性の前に、

のことを説明をしますね

とは?

はでできています。

水は、2つの水素原子(H)1つの酸素原子(O)による水分子H₂O)でできてます。

水分子は酸素原子と水素原子は角度(約104.5度)で結合しています。

水分子は「曲がった形」をしており、電荷の偏り(極性)が生じているのです。

だから、極性分子である水は、他の極性分子とくっつきやすい特性があります。

液体の水

液体の水は、H₂O分子集合体です

液体の水は水分子が寄り集まってお互いに引き合って作られています

これは分子同士が水素結合という特別な力で結びついているためです。

この引力は強すぎず、個々のH₂O分子は自由に動き回ることができます。

だから、液体の水は流れたり形を変えたりすることができるのです。

水蒸気

一方、水蒸気は気体の水です。

気体の水は、H₂O分子1個だけが浮遊している状態です。

水分子間の距離が遠く、ほとんど互いに引き合っていません。

分子が速く動き回っているため、自由に空間を飛び回ることができます。これが水蒸気の特徴です。

走る園児

水について理解して頂けたでしょうか?

液体の水は水分子が集合した状態であり、

気体の水(水蒸気)は水分子が1個で浮遊している状態です

透湿性(とうしつせい)とは

走る園児

水のことを理解してもらったと思いますので、

次は透湿性について解説します

透湿性とは、水蒸気の通り易さのことをです。

プラスチックなどの高分子材料は一見、何も通さないように見えますが、

ミクロで見ると、ジャングルジムのような網の目構造をしています。

この網の目が水分子1個よりも大きければ、水蒸気は通り易く、透湿性が高くなります。

つまり、網の目(プラスチックの分子密度が低い)と透湿性は高くなります。

反対に網の目が水分子よりも小さい場合は、透湿性は低くなります。

走る園児

透湿性に影響する条件はもう一つあります。

吸湿性(きゅうしつせい)とは

吸湿性とは、水蒸気の引っ付き易さのことです

水分子は極性があるので、プラスチックの分子に極性を持った箇所があると、水分子が引っ付いてしまい、水分子が透過し難くなるので透湿性は低下します。

このようにプラスチックの分子に水分子を引っ付ける極性基(親水基)が多いほど、大量の水分子が引っ付けるようになります。

ナイロン(ポリアミド)は極性基(親水基)が多く含まれており、水蒸気を引っ付けやすく吸湿性が最も高いプラスチックです。

湿気の多い環境ではナイロンは吸湿することで形状や寸法が変わることがあるので注意が必要です。

他にも、ポリウレタンポリエステルなども吸湿性があります

吸水性

吸水性とは、液体の水を吸収する性質のことです。

吸湿性は個々の水分子を引っ付ける性質でしたが、吸水性は水分子の集合体である液体の水を引っ付ける(吸収)する性質ですので、間違えないようにしてください。

プラスチックが吸水性をもつ原理は、2つあります。

①親水基を持っている(化学吸着)

プラスチック分子の中に親水基が含まれている場合、水が引き寄せられて吸収されやすくなります。これは吸湿性と同じ原理ですから、吸湿性が高いプラスチックは吸水性も高い傾向があります。

②分子間の隙間(物理吸着)

プラスチックの分子構造が緻密でない場合、水がプラスチックの中に入り込みやすくなります。

例えば、ポリウレタンなどは比較的柔軟で、多くの分子間隙が存在するため、吸水性があります。

また、表面が多孔質である場合、液体の水が内部に吸収されやすくなります。

走る園児

スポンジが水をよく吸うイメージと同じです。

おわりに

プラスチックの透湿性、吸湿性、吸水性は、その用途や性能に直結する重要な特性です。

水やプラスチックを分子構造からミクロの視点で考えることで、それぞれの特性の理解を深めることができると思います

 

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